第四話 サツキ踊る流れ

長良鱒で良く知られるサツキ鱒は 長良を含め 木曽 揖斐 その支流となる根尾の 各河川にてその
姿を見ることが出来ます 最近はこんな所でと思われる 近辺の中小河川での情報が届くむことも有り
一般に言われているよりも この魚の存在はかなり多いのではないかと思います。

極め付きの出来事では 名古屋市内を流れる庄内川にて 鯉狙いの釣師に釣り上げられる事となった
サツキ鱒を確認した時 さすがに驚きを隠す事が出来ませんでした。
この魚を狙う釣へ ちょっとづつ明るい未来を感じているこの頃です。

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本流特有の押しの強い流れへと 腰までの立ち込み

いったい何度目の振込みになるのだろう。

下見を終えてから 二週間後の挑戦に 流れの下に

潜んでいるだろう ”ヤツ”の気配を感じつつ 無心で

竿を振る 背景色の中へと埋もれてしまいそうに。

100m程は有りそうな川幅に 攻め方の手順に迷い はや2週間も過ぎてしまった まだヤツは

そこに居るのだろうか・・・?    先程釣り上げた八寸程の”銀化”は 迷いを確信へと替えている。

そしてそれは前触れも無く来た 小さな糸ふけを示す毛糸の目印に 腕一杯の強合わせを 四間の

がまかつ本流竿へ伝えると 一気にヤツは下流へと走る 上手へと竿をねせ突進をしのぐも 魚の

大きさに水流が加わり じり 々 と下流へと引かれつつ 押しの緩い太もも程の流れに足場を固める。

1.5m程の川底に ヤツは動揺も見せずゆっくりと移動しだす その度一号のラインは ”ヒュー 々”と

悲鳴をあげ出し 流れの下で勝ち誇るヤツの表情が思い浮かぶ・・・・・。

・・・・・・・・ 幾度かの突進と強引な締め込みを凌ぐも 竿は”ギシ 々”と いよいよ限界を告げ出す。

よし勝負に出よう!!竿を目一杯左後方へと倒し

それに逆らうヤツの鼻先へと 一瞬に切り返す

  狙いどうり流れの緩い浅瀬へ スツとヤツは

入り込んでくる。

銀色の魚体が横に成るのを確認 最後の抵抗を

警戒しつつタモを取り出す。

勝負は思うより呆気なくついた タモの中に横たわるヤツを見下ろし 充たされて行く想いを感じる

    五月 サツキ踊る流れに。

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現在サツキ鱒と呼ばれているその魚体は 30年程以前 よくその姿を見ることの出来た地方では
一種の憧れと共に特別な存在として知られ 本鱒とか川鱒と呼ばれていたようです。
ヤマメが銀の衣を身にまとい 一年後に海へと落ち 再び流れへその姿を現した時 サクラ鱒と
名を変えるように アマゴ鱒をサツキ鱒と呼びますが その時代(30年程前)有識者や資料には
アマゴの降海型〜ビワ鱒の紹介がほとんどで 滋賀県は琵琶湖へと流入する河川産の魚体への
特徴と共通性を示して有りました しかし現在ビワ鱒は サツキ鱒が沢山の紙面や資料の上で
取り上げられるのに比べ その姿の確認情報は少なくなりつつ有るようです。

五月 サツキの花咲く頃 踊るサツキ鱒 よくぞ名付けた呼び名ではあります。

                                              
                                            OOZEKI